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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)3468号 判決 1957年3月14日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人蒔田太郎の上告趣意第一点について。

記録によると、被告人は控訴申立後、昭和三一年五月七日弁護士山下兼満を弁護人に選任届出をなし、同月一〇日右弁護人は辞任し、同月九日被告人より国選弁護人選任の申請あり、裁判所は六月一日国選弁護人として弁護士杉尾利雄を選任し、同日控訴趣意書提出最終日を七月二日と指定し、右弁護士及び被告人にその通知がなされた。その後六月一三日被告人は弁護士中馬新之助を弁護人に選任届出でたので、翌一四日裁判所は右国選弁護人を解任した。同月二一日被告人より控訴趣意書の提出があり、裁判所は公判期日を八月八日午前一〇時と指定しそれぞれ適法にその通知がなされた。所論のように被告人から公判期日の申請がなされたが、裁判所は公判を開き本件が必要的弁護事件であるため裁判所は国選弁護人として弁護士福沢文夫を選任し、同弁護士はかねて被告人より提出されている控訴趣意書に基づき弁論をしたのである。本件で控訴趣意書を提出したのは被告人だけであり(被告人の選任した弁護士中馬新之助からは控訴趣意書の提出はなかった)、その論旨は量刑不当の主張だけである(被告人は第一審で事実を認め争っていない)。控訴審においては被告人は公判期日に出頭することを要しないし、控訴審における弁論は控訴趣意書に基づいてしなければならないし、福沢弁護人は公判期日の変更を申請することなく被告人提出の控訴趣意書に基ずいて弁論をしたのである。以上の経過に徴すれば所論の違法があるとは認めえられない(判例集三巻一一号一八五七頁参照)。

同第二点は単なる訴訟法違反の主張であり(なお原判決は刑訴規則二四六条によったもので、何等違法ではない)、被告人の上告趣意は量刑不当の主張に帰し、いずれも上告適法の理由に当らない。

よって刑訴四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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